大隈 重信
東亜の平和を論ず
〔今日の世界と東アジア〕
諸君、近来支那朝鮮という問題がよほど世間の注意を惹くことになった。ことに満韓という問題は政治家、学者は勿論、事業家の間などにも、よほど注意せらるることになったのは甚だ喜ぶべきことであります。我輩はほとんど十数年以来支那の問題を研究している。しかし今までは社会はあまりこれに耳を傾けなかった。然るに近来は全社会を通じて、この問題によほど重きを置くということになったのは、諸君と共に最も喜ぶべき事である。抑々この問題を解釈するために最も必要なる事件は、目下起っているところの我が国家の安危栄辱に関するこの戦争である。この戦争の結果がどうなるかということが先決問題である。もしこれが負ければ清韓どころではない。我が海岸線を守らなければならぬという事になる。これは実に容易ならぬ問題である。国民の頭上に臨んでいるところの最も大なる問題である。しかしこの戦争には必ず勝つと信じている。当局者も無論信じている。ことに軍隊は最も大なる自信力を以て戦いつつあるのである。日本の勇敢なる軍隊と、智勇兼備の将校の力に依って必ず勝つに違いない。しかしながら、戦争の勝利によりてすべての事は決せられぬのである。
今日の世界は決して日露で支配している訳ではない。日露以外、世界に強国、大国が存在しているということを忘れることはならぬ。今日世界に如何なる大国があるか、如何なる強国があるかといえば、是非七つ八つ指を屈せねばならぬ。あたかも支那の春秋戦国の時代、戦国七雄というような有様である。欧羅巴に於ては英、仏、独、露西亜、墺太利、伊太利、この六大国がある。これに北米合衆国を加えて七大国である。戦