木村 荘十
雲南守備兵
孫伍長
一九四〇年……曽つて雲烟万里の秘境として何者の侵攻も許さなかった雲南府も、不安と焦燥の裡にその年を越そうとしていた。
五華山を中心に、雅致のある黄色い塀や、緑の梁や、朱色の窓を持つ古風な家々を、永い間護って来た堅固な城壁も――海抜七千尺に近いこの高原を囲む重畳たる山岳も――空爆の前には何の頼みにもならなかったのである。
その宵も南門外の雲南火車站に着いた小さな貧弱な列車からは、溢れるように避難民が吐き出されて火車站のフランス風の玄関から、新市街へ流れ出していた。
木村 荘十
孫伍長
一九四〇年……曽つて雲烟万里の秘境として何者の侵攻も許さなかった雲南府も、不安と焦燥の裡にその年を越そうとしていた。
五華山を中心に、雅致のある黄色い塀や、緑の梁や、朱色の窓を持つ古風な家々を、永い間護って来た堅固な城壁も――海抜七千尺に近いこの高原を囲む重畳たる山岳も――空爆の前には何の頼みにもならなかったのである。
その宵も南門外の雲南火車站に着いた小さな貧弱な列車からは、溢れるように避難民が吐き出されて火車站のフランス風の玄関から、新市街へ流れ出していた。