石原 純
ロード・ラザフォード
ウェストミンスター寺院
イギリスのロンドンのテームズ河の北側に著名なウェストミンスター寺院というのがあります。これが最初に建てられたのは七世紀頃のことだと云われていますが、現在の伽藍はその後十三世紀頃に改造されたので、更に礼拝堂や高塔などがなお後に建て増されたのでした。ところでこの寺院はイギリスの帝王の戴冠式がいつもそこで行われることや、代々の帝王皇后の墓処にもなっているので、イギリスでは第一に重んぜられているのですが、そればかりでなく国家に功労のあった人々の墓碑をもそこに置くことになっているので、ここに葬られると云うことはイギリス国民の最高の栄誉とせられているのです。今日までにこの栄誉にあずかった人々の中には、政治家や、軍人などの外に、たくさんの詩人、文学者などと、相並んで、科学者の名をもかなりに見出だすことができるので、この事はそこで学問がいかに尊重されているかを示すのでもあり、この点は大いに羨まれなくてはならない処でもあると思われるのです。
さて、この科学者のなかには、有名なニュートンを始めとしてロード・ケルヴィン、マクスウェル、ファラデイおよびその他の名だかい人々がそこに見出だされるのですが、最近には科学者として世界に普ねく知られていたロード・ラザフォードや、サー・ジョセフ・ジョン・タムソンが同じくここに葬られる栄誉をにないました。これは、もちろん当然のことと思われますが、それで見てもここにお話ししようとするロード・ラザフォードがどれほど偉大な仕事をしたかがわかるのでしょう。ラザフォードの亡くなったのは今から五年前、即ち一九三七年の十月十九日でありましたが、その月の二十