小山 清

朴歯の下駄

むかしの話だ。

私がそのみせの前を通ったとき、そこの番頭さんが、

「よう、前田山。」

と私のことを呼びかけた。その頃私は廓を歩くと、いつも「応援団長」とか「朴歯の旦那」とか呼ばれた。私は久留米絣の袷を着て、袴をはいて、そうして朴歯の下駄をガラガラ引き摺って歩いていたのである。私にはそのほかにどんなよそゆきの持ち合せもなかったのだ。「前田山」は頬をほてらせてみせの中へ入っていった。私はもう上気していて、履物を脱いでしまったような気持になっていた。番頭さんは、

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