久生 十蘭
葡萄蔓の束
北海道の春は、雪も消えないうちにセカセカとやって来る。なにもかもひと口に頬張ってしまおうとする子供のようだ。落葉松の林の中は固い雪でとじられているのに、その梢で鶫が鳴く。
低く垂れていた鈍重な雪雲の幕が一気にひきあけられ、そのうしろからいちめん浅みどりの空が顔をだす。
雪の表面が溶け、小さな流れをつくって大急ぎで沢のなかへ流れこみ、山襞や岩の腹についていた雪は大きな塊になってあわてふためいて谷の底へころがりおちる。
藪蔭には蝦夷菫。
久生 十蘭
北海道の春は、雪も消えないうちにセカセカとやって来る。なにもかもひと口に頬張ってしまおうとする子供のようだ。落葉松の林の中は固い雪でとじられているのに、その梢で鶫が鳴く。
低く垂れていた鈍重な雪雲の幕が一気にひきあけられ、そのうしろからいちめん浅みどりの空が顔をだす。
雪の表面が溶け、小さな流れをつくって大急ぎで沢のなかへ流れこみ、山襞や岩の腹についていた雪は大きな塊になってあわてふためいて谷の底へころがりおちる。
藪蔭には蝦夷菫。