江戸川 乱歩

猟奇の果

前篇 猟奇の果

はしがき

彼は余りにも退屈屋で且つ猟奇者であり過ぎた。

ある探偵小説家は(彼も又退屈の余り、此世に残された唯一の刺戟物として、探偵小説を書き始めた男であったが)この様な血腥い犯罪から犯罪へと進んで行って、遂には小説では満足出来なくなり、実際の罪を、例えば殺人罪を、犯す様なことになりはしないかと虞れた由であるが、この物語の主人公は、その探偵作家の虞れたことを、実際にやってしまった。猟奇が嵩じて、遂に恐ろしい罪を犯してしまった。

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