中野 鈴子

一家

わたしの祖先は代々が百姓であった八町はなれた五万石の城下町ゆきとどいた殿様のムチの下で這いまわった少しのことに重いチョウバツ百たたきの音が夜気を破った

天保に生まれた祖父はいつも言った百姓のようなつらい仕事があろうか味無いもの食って着るものも着ず銭ものこらん金づちの川流れだ

わたしの父母は五人の子供を育てた父母は子供を百姓にさせる気はなかった二人の男の子は五つ六つから朝晩瀬戸の天神様へおまいりした小学校を出ると学校へ入るためにズッと村をはなれた

一番目の息子は彼が二十年近くの学校生活を終えたとき父親の油と汗、いくばくかの田地にすりかえられている自分を発見した彼は父親の血肉と一家のたてなおしを背負って外国に仕事を見つけ海を渡った慣れぬ異国の風は日ならずして彼をたおしたはるばる父がかけつけたとき、彼は骨になっていた

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