江戸川 乱歩

悪霊物語

老人形師

小説家大江蘭堂は、人形師の仕事部屋のことを書く必要に迫られた。ブリタニカや、アメリカナや、大百科辞典をひいて見たが、そういう具体的なことはわからなかった。

蘭堂は、いつも服をつくらせている銀座の洋服屋に電話をかけた。そして、表の店に飾ってあるマネキン人形は、どこから仕入れているのかと訊ねた。

マネキン問屋の電話番号がわかったので、そこへ電話した。こちらは小説家の大江蘭堂だが、人形師の仕事部屋が見たい。なるべく奇怪な仕事部屋がいい。一つ変り者の人形師を教えてくれないかと云うと、先方は電話口で、エヘヘヘヘヘと気味わるく笑った。

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