佐藤 春夫
われらが四季感
「ぼくはもう極楽行きは見合はせることにきめたよ」
と或る時、芥川龍之介が、例のいたずらつぽい眼をかがやかしながら、わたくしに話しかけたことがあつた。
「?」これはきつと何かあとにつづくおもしろい言葉があるに違ひないと予想したから、わたくしがあとを期待してゐると、彼は言ふのであつた。
「極楽は四時、気候、温和快適だとかで、季節の変化は無いらしいね。季節の変化のない世界など、ぼくにはまつぴらなのだ」
佐藤 春夫
「ぼくはもう極楽行きは見合はせることにきめたよ」
と或る時、芥川龍之介が、例のいたずらつぽい眼をかがやかしながら、わたくしに話しかけたことがあつた。
「?」これはきつと何かあとにつづくおもしろい言葉があるに違ひないと予想したから、わたくしがあとを期待してゐると、彼は言ふのであつた。
「極楽は四時、気候、温和快適だとかで、季節の変化は無いらしいね。季節の変化のない世界など、ぼくにはまつぴらなのだ」