山本 周五郎
梟谷物語
慶応四年二月(この年九月に明治となる)、勅命を捧じて奥羽征伐の軍を仙台に進めた九条道孝卿は、四月のはじめまず庄内藩酒井忠寛を討つため、副総督沢為量に命じて軍勢を進発させた。……この物語はその進軍の途上に起った出来ごとである。
一
仙台を出発した鎮撫軍が、山形から天童まで進んだとき、沢副総督は第三番隊の中村半九郎という若い隊長を呼んで命令を与えた。
「中村、おまえは第三隊二百名をひきいて本隊とわかれ、月山から羽黒山を越えて酒井軍のうしろへふいうちをかけてくれ」
山本 周五郎
慶応四年二月(この年九月に明治となる)、勅命を捧じて奥羽征伐の軍を仙台に進めた九条道孝卿は、四月のはじめまず庄内藩酒井忠寛を討つため、副総督沢為量に命じて軍勢を進発させた。……この物語はその進軍の途上に起った出来ごとである。
一
仙台を出発した鎮撫軍が、山形から天童まで進んだとき、沢副総督は第三番隊の中村半九郎という若い隊長を呼んで命令を与えた。
「中村、おまえは第三隊二百名をひきいて本隊とわかれ、月山から羽黒山を越えて酒井軍のうしろへふいうちをかけてくれ」