山本 周五郎
武道宵節句
一
――飢えて窮死するとも、金一両はかならず肌に着けおくべし。武士の嗜なり。
父は生前よくそういっていた。三樹八郎はいま、金一両と四、五枚の銭を手にして、父の言葉を思出しながら我知らず太息をついた。
――渇しても盗泉の水は汲まず、貧にして餓死するはむしろ武士の本懐なり。
山本 周五郎
一
――飢えて窮死するとも、金一両はかならず肌に着けおくべし。武士の嗜なり。
父は生前よくそういっていた。三樹八郎はいま、金一両と四、五枚の銭を手にして、父の言葉を思出しながら我知らず太息をついた。
――渇しても盗泉の水は汲まず、貧にして餓死するはむしろ武士の本懐なり。