吉野 秀雄
ひとの不幸をともにかなしむ
いまわたしの胸の奥にあることばは、
ひとの幸福をともによろこび
ひとの不幸をともにかなしむ
といふものだ。(「ひと」とは〈人間〉の意でなく〈他人〉の意)。わたしはもとより道徳なんて説くがらではないし、処世訓・座右の銘なんて大きらひなはうだが、ここのことばは、いつしかわたしの心にしみついてゐること、そして最近、後にいふある事情から、いつさうはつきり意識されてゐることもまた事実なので、問はれるままにいつてみたまでだ。他に語り、他にすすめるのではなく、自分がさうありたいとねがつてゐるにすぎない。