横光 利一悲しみの代価一彼は窓の敷居に腰を下ろして、菜園の方を眺めてゐた。「あなたお湯へいらつしやる?」と妻が勝手元から、訊いた。彼は默つてゐた。近頃殊に彼は妻が自分の妻だと思へなくなつて來てゐた。青空文庫の作品カード