新村 出
蕗の薹
十数年このかた冬から春へかけて蕗の薹を嗜食するやうになつたが、もとは確か咳嗽の薬だとか云つて亡き母がどこからか貰つて来たのを、塩からく烹させて食べたのから始まつたと思つてゐる。
少年のとき、朝のおつけに、あれを刻み込んで父がさもうまさうに味つてゐたのを、それこそ苦々しさうに眺めてゐたことも覚えてゐる。
近年は毎季しばしばそれを賞美して独り悦に入つて、時には『猿蓑』の連句に、芭蕉が、
蕗の芽とりに行燈ゆりけす
新村 出
十数年このかた冬から春へかけて蕗の薹を嗜食するやうになつたが、もとは確か咳嗽の薬だとか云つて亡き母がどこからか貰つて来たのを、塩からく烹させて食べたのから始まつたと思つてゐる。
少年のとき、朝のおつけに、あれを刻み込んで父がさもうまさうに味つてゐたのを、それこそ苦々しさうに眺めてゐたことも覚えてゐる。
近年は毎季しばしばそれを賞美して独り悦に入つて、時には『猿蓑』の連句に、芭蕉が、
蕗の芽とりに行燈ゆりけす