正岡 子規
牡丹句録
左の一篇は客月痼疾平かならざりし病苦の中、子規子の手記になりたる日記なり。巻頭に中村不折氏の牡丹園と一輪の牡丹との絵画あり。其牡丹赫奕として紅燃えんとするものあり、子規子の墨痕亦た古雅瀟洒たり。読み到りて当時を追想すれば転た悚然たらずんばあらず、然も今之を誌上に掲載して、昔日の夢を笑ふが如き、蓋し天の幸のみ。碧梧桐附記。
五月九日 頃来体温不調、昼夜焦熱地獄ニ在リ 此日朝把栗鼠骨二子牡丹の鉢をかゝへて来る 札に薄氷と書けり 薄紅にして大輪也 晩に虚子西洋料理を携へて到る 昼夜二度服薬 発汗疲労甚しく眠安からず
薄様に花包みある牡丹哉
人力に乗せて牡丹のゆるき哉