新村 出
南嶋を思いて
文学博士 新村 出
今春琉球に関する一、二の古本を読んでから南島を思う情が切になり来った矢先に、伊波君の『古琉球』と題する南国の色彩豊かな著述がしかもその国の人の手に由って贈られたのは異常に嬉しかった。
森島中良の『琉球談』中に見える年中行事(むしろ歳時記)を読んだのは未だ寒い頃であったかと思う。
□二月十二日、家々にて浚井し女子は井の水を汲んで額を洗ふ、如此すれば疾病を免るゝとなり、此月や土筆萌出、海棠・春菊・百合の花満開し蟋蟀鳴く。□三月上巳の節句とて往来し、艾※(「米+羔」、第3水準1-89-86)を作て餉る、石竹・薔薇・罌粟倶に花咲く、紫蘇生じ、麦秋り虹始て見ゆ。□四月させる事なし、鉄線開き笋出。蜩鳴き、蚯蚓出、螻※[#「虫+國」、U+87C8、8-1]鳴き、芭蕉実を結ぶ、国人是を甘露と名づく。