中谷 宇吉郎

琵琶湖の水

初めから汚い話で恐縮であるが、琵琶湖へ小便をしたら、水嵩はどれだけ変るかという問題がある。

これは一寸面白い問題であって、日本の政治家ならば、大抵の人は「どれだけかというくわしいことは技術者に計算させればすぐわかるが、とにかく極めて少量ではあるが、小便の分量だけは水嵩が増す」と答えるであろう。如何にもそのとおりのように聞える。しかしこれが一番の愚答なのである。

琵琶湖の面積は六七〇平方キロ余りある。一回の小便の量を計算に便利のために、約六七〇立方センチとする。少しくらいこれより多くても少なくても、結論にはかわりはない。これだけの水量が加わるとすると、六七〇立方センチを六七〇平方キロで割った数だけ水嵩が増すことになる。それならば「極めて少量ではあるが幾分は水嵩が増す」という答でいいではないか、ということになりそうである。しかしそう簡単には言えないので、こういう場合に、何か返答をしようと思ったら、割算をやってみなければならない。

その割算は極めて簡単である。

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