アンデルセン ハンス・クリスチャン

雪の女王

さいしょのお話

鏡と、鏡のかけらのこと

さあ、いいですか、お話をはじめますよ。このお話をおしまいまで聞けば、わたしたちは、いまよりも、もっといろいろなことを知ることになります。それは、こういうわけなのですよ。

あるところに、ひとりのわるいこびとの妖魔がいました。それは妖魔の中でも、いちばんわるいほうのひとりでした。つまり、「悪魔」です。ある日のこと、悪魔は、たいそういいごきげんになっていました。というのは、この悪魔は、まことにふしぎな力をもつ、一枚の鏡をつくったからでした。つまり、その鏡に、よいものや、美しいものがうつると、たちまち、それが小さくなり、ほとんどなんにも見えなくなってしまうのです。ところが、その反対に、役に立たないものとか、みにくいものなどは、はっきりと大きくうつって、しかもそれが、いっそうひどくなるというわけです。たとえようもないほど美しい景色でも、この鏡にうつったがさいご、まるで、煮つめたホウレンソウみたいになってしまうのです。どんなによい人間でも、みにくく見えてしまいます。さもなければ、胴がなくなって、さかさまにうつってしまうのです。顔は、すっかりゆがめられてしまって、見わけることさえできません。そのかわり、そばかすが一つあっても、それが、鼻や口の上までひろがって、はっきりと見えてくるしまつです。

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