菊池 寛

三人兄弟

一 三筋の別れ道

まだ天子様の都が、京都にあった頃で、今から千年も昔のお話です。

都から二十里ばかり北に離れた丹波の国のある村に、三人の兄弟がありました。一番上の兄を一郎次と言いました。真中を二郎次と言い、末の弟を三郎次と言いました。兄弟と申しましても、十八、十七、十六という一つ違いで脊の高さも同じ位で、顔の様子や物の言いぶりまで、どれが一郎次でどれが二郎次だか、他人には見分けの付かないほどよく似ていました。

不幸なことに、この兄弟は少い時に、両親に別れたため、少しばかりあった田や畑も、いつの間にか他人に取られてしまい、今では誰もかまってくれるものもなく、他人の仕事などを手伝って、漸くその日その日を暮しておりました。が、貧乏ではありましたが、三人とも大の仲よしでありました。

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