江戸川 乱歩

「悪霊物語」自作解説

私のつけ句

連作とは連歌俳諧の如きものであろう。第一の発句は余り限定的でない方がよろしい。脇はこれをいかようにも受けとるであろう。第三はまたそれを別の方向に転化するであろう。そして、最後の揚句と最初の発句とは似もつかぬ姿となることもあり得る。

私はこの連作の第一回を、ホフマンの「砂男」や、ワイルドの「ドリアン・グレイ」を連想しながら書いた。これをすなおに引きのばせば、幻想怪奇の物語となる。老人形師は人形に生命を吹きこむ錬金術師であろう。また、モデル女を誘拐し、監禁する色魔であろう。小説家はこの老魔術師の心を知る人である。知りながら、その妖術のとりことなるのである。

彼はその女の、人間とも人形ともつかぬ妖美にうたれ、これを恋するであろう。この女は人間か、それとも老魔術師が造り出した人形か、この疑惑は物語の終りまで解けないであろう。

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