久生 十蘭
蛙料理
むぐらをわけて行くと、むやみに赤蛙がとびだす。ふとフランスで食べた蛙料理を思ひだした。
牛酪焼の蛙の脚をつまんで歯でしごくと、小鳥よりもやはらかでなんともいへぬ香気が口の中にひろがる。
「おい、蛙のソーテは乙だつたな」といふと、並んで歩いてゐた石田が、
「おれもそれを考へてゐたところだ。こいつを忘れてゐたのは醜態だよ。おい、やらう」
久生 十蘭
むぐらをわけて行くと、むやみに赤蛙がとびだす。ふとフランスで食べた蛙料理を思ひだした。
牛酪焼の蛙の脚をつまんで歯でしごくと、小鳥よりもやはらかでなんともいへぬ香気が口の中にひろがる。
「おい、蛙のソーテは乙だつたな」といふと、並んで歩いてゐた石田が、
「おれもそれを考へてゐたところだ。こいつを忘れてゐたのは醜態だよ。おい、やらう」