山川 方夫
一人ぼっちのプレゼント
ホテルは海に面していた。といっても、ホテルと海との間には、まず幅のある舗装道路があり、それから海岸公園のわずかばかりの緑地帯がある。海はその向うに、白や淡緑色の瀟洒な外国汽船や、無数の平べたい艀や港の塵芥やを浮かべながら、濃い藍色の膚をゆっくりと上下していた。
ホテルの隣りには小さな花屋がある。おそい秋の午後の、重みのない透明な光が、色とりどりの切花や鉢植えの花を輝かせて、そこにだけ鮮やかな色彩が乱れている。
その入口から、まだ若い夫婦らしい二人づれが出てきた。薄いウール地の和服の女は、眩しそうに掌で眉の上に廂をつくり、ワイシャツにセーター、ズボンの男のほうは、所在なげにホテルの部屋鍵を指で廻している。二人はぶらぶらと歩いて行き、まるで立止ったり向きを変えるのが面倒なためのように、そのまま舗道を横断して、海岸公園に入った。
女は顔をしかめた。手を頬にあてる。