山川 方夫

待っている女

寒い日だった。その朝、彼は妻とちょっとした喧嘩をした。せっかくの日曜日なので、彼がゆっくりと眠りたいのに、妻はガミガミと彼の月給についての文句をいい、枕をほうりなげて、挙句のはて、手ばやく外出の仕度をして部屋から出て行ってしまったのだ。

蒲団に首をうずめたまま、彼は、またか、と思った。また半日も帰らないのだろう。近ごろ、妻はよくこの手を使う。どうせ実家にでも行き、思うさまおれの悪口をならべてくるのにきまっている。が、それで彼女の気がすむなら、それもよかろう。おれはおれでもう少しの時間、この蜜のような眠りをむさぼれればそれでいいのだ。

窓はもう明るく、一人きりの静かな部屋の中で、彼は、ごくやすらかにまた眠った。

目がさめたとき、枕もとの時計は十一時をまわっていた。――腹のあたりが空虚すぎて、もう、どうにも睡ることができない。

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