山本 周五郎

水中の怪人

人間か河童か? 海底を歩く怪物

いまどき河童がいるなどと云っても、おそらく本当と思う者はないだろう。

まだ河童というものが一ぱんに信じられ、絵にかかれたり、まことしやかな物語としてつたえられた時代にも、多少の知識をもった人々は、架空のことと笑ってかえりみなかったのである。――それが現代の、しかも帝都のまんなかに出現したのだから、世間の耳目をいかにおどろかしたかは想像のほかであった。

第一の事件は五月十二日におこった。

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