ルヴェル モーリス
空家
錠をこじあけて屋内へ入ると、彼はその扉を要心ぶかく締めきって、じっと耳を澄ました。
この家が空家であることは前から知っていたが、今入ってみると、寂然していてカタとの物音もないのと、あやめも分かぬ真の闇に、一種異様な気味わるさを感じた。一体、今夜のように、人がいてくれなければいいという願望と、そうした静寂の不気味さを同時に感じたということは、彼としてはこれまでに曾てない経験であった。
やがて手探りで扉の閂をおろすと、少し安心して、衣嚢から小さな懐中電燈を出して四辺を照らしたが、闇を貫くその燈影は、胸の動悸に震えてちらちらした。
彼は強いて勇気を出して、