ルヴェル モーリス

孤独

その年老った事務員は、一日の単調な仕事に疲れて役所を出ると、不意に蔽かぶさってしだいに深くなってゆく、あの取止めもない哀愁に囚われた。そして失える希望と仇に過ごした光陰を歎く旧い悩みを喚びおこしながら、珍らしくも、ぼんやりと門前に立ちどまった。それまでは、毎日脇目もふらずに宿へ帰ってゆくことが、二十五年もつづけて来た習慣だったのに。

街は賑わっていた。店舗にはみな煌々と燈りがついて、通りかかる女たちも、人も、物も、すべてこの春の黄昏の幸福な安逸と、生の楽しさとを物語っていた。

老事務員は考えた。

「おれも今夜は人並に楽しんでみたいな」

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