ルヴェル モーリス
見開いた眼
寝床に仰向きになっていたその死人は、実に物凄い形相だった。
体はもう硬直していたが、頭髪は逆立ち、口を歪め、唇は上反って、両手で喉を掻きむしる恰好をしていた。そして小さなランプが一つ点っている薄暗い室の中に、なお生けるがごとくかっと見開いた両眼には、最後に何か恐ろしいものを目撃した恐怖の跡が、まざまざと残っていた。
その傍で、警部や警察医や刑事達に取囲まれた一人の下男が、不気味な屍体を見まいとして、自分の顔へ手を翳しながら、話をつづけた。
「十一時頃だったと思います。旦那様はもうお臥みでしたが、私は自分の部屋へ退ろうとしていると、叫び声がしました。ハイ、たしかに叫び声です。私はいきなり階段を駆け登って、旦那様のこのお室の戸を叩きましたが、御返事がないものですから、室内へ入って御様子を見ると、思わず後退りをして大声で助けを呼びました。ところが、そのとき、ランプのあたりに二個の人影がちらついたのを認めました。で、私は飛ぶように階段を降りて、庭を突切って、お届けに行ったんですが、その間に誰も此室から逃げ出せる筈がありません。何故って、私は戸口を二重鍵で締めておきましたし、どの窓も厳重な格子付になっておりますので」