ルヴェル モーリス
麦畑
ジャン・マデックは、緩くり調子をとってさっくさっくと鎌を打ちこんでゆくと、麦穂は末端をふるわせ、さらさらと絹ずれのような音を立てつつ素直に伏るのであった。
ジャンは歩調を按排しながら、器用な手捌きで前へ前へと刈りこんで行った。背ろには刈られたあとの畑が鳶色の地肌を現わし、そのところどころに小石原があって、褐色になった麦藁が厚く毛羽立っていた。
年老った母親は、ジャンの後から腰をかがめて、散らばった落穂を拾いあつめていたが、彼女の重い木履を引きずっている足や、皺だらけの節くれだった手や、襤褸衣物を着たその胴体だけを見ると、まるで獣が四つ足で這っている恰好だった。
太陽が地平線から昇ると、炎熱があらゆるものを押しつつんで、田園全体が痲痺したようになり、そして耕地は爛熟した大きな果実のごとく、何ともいえない甘酸ぱい香気を発散するのであった。