ルヴェル モーリス
老嬢と猫
その老嬢は毎朝、町の時計が六時を打つと家を出かけた。
それは最初の弥撒を聴くために、近所の教会堂へ出かけるのだが、彼女はまず注意ぶかく戸じまりをしてから、どの頁も手垢によごれて隅がぶよぶよになった、古い祈祷書をしっかと抱えて、小急ぎに街を通ってゆくのであった。
教会堂へつくと、殆んどがら空きな脇間の祈祷台に膝まずいて、両手を組み合せ頸をふりふり、牧師の声に合せて低声でお祷りをした。そして勤行がすむとさっさと帰って行くのだった。
彼女は痩せ面で、いかにも片意地らしい額の、顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)のあたりはもう小皺だらけのくせに、凹んだ眼の底には、或る不思議な情熱が燃えているようであった。