北大路 魯山人
料理人を募る
「料理人を募る」星岡茶寮で新聞広告を出すと、たちまちあのチッポケな十行くらいの雇傭広告一回に対して、百人余りもぞろぞろ申込者があった。不景気で失業している人の多いのにもよろうが、料理人が世に溢れるくらいたくさんいるのだとは、よくよく肯かれる。にもかかわらず、ここにこの広告を出すことになった。たくさんの人を欲しいためではなく、たった一人の真の料理人を本誌読者諸氏のお知合の中から得られはしまいか、と思ってです。
真の料理人とは、良寛さまから「いやなものは料理人の料理」と、いやがられない良い料理をこしらえ得る人です。従って、ほんとの料理をよくわきまえた人で、今後わきまえ得る人の意味です。
そういう料理人はまず第一に味を知り、味を楽しむ人でなくてはなりません。うまいもの、うまくないものに対して、極度の緊張した神経を始終持って、日常の食事を踏み台として、人生の修業をやっていく心がけの人です。月収百円、二百円、三百円を目的として茶寮にはいろうとする人は望むところではありません。
応募の資格。日本料理とかぎらず、美的趣味を持っている人。絵画、彫刻、建築、工芸等、芸術に愛着を持ち、今日まで食物道楽で変人扱いを世間から受けるくらいの人。そうして非常に健康な身体を持った人。