中谷 宇吉郎
科学は役に立つか
一 はしがき
昨年の暮に、ちょっと用事があって、ワシントンへ出かけた機会に、久しぶりでケリイ博士を訪ねてみた。
ケリイ博士といえば、日本の科学界には、かなり親しい名前であって、総司令部があった頃、経済科学局で、永らく科学技術部門の主任をしていた人である。
この頃、総司令部が占領中に日本へ押しつけた、いろいろな施策に対して、かなり反動的な批判が強いようである。しかし自然科学に関する限りは、総司令部の援助が、日本の学界の更生に、大いに役立ったと思われる。一つの理由は、人選がよかったからで、この関係方面の人たちは、概して人柄がよかった。そして親身になって、日本のためのことを考えてくれた。