中谷 宇吉郎

科学ブームへの苦言

科学ブームの発生

この数年来の科学の飛躍的発展は、今さら述べ立てるまでもない。人工衛星、原子力問題、人工頭脳、南極観測と……、この近年の新聞や雑誌に、科学関係の記事が、一つも載らない日は、まず無いといってよい。まさに科学ブームの時代である。

二十五年ばかり前に、朝日新聞が、初めて科学欄をつくり、月に一回か二回、科学の記事を載せ始めたのは、当時としては、まさに劃期的な壮挙であった。それまでは、科学の記事といえば、社会面のトップに、いわゆる「世界的大発見」の記事が、一日だけあらわれて、すぐ消えて行く程度のことであった。まさに隔世の感がある。

科学が今日のように発達してくると、政治も、経済も、科学を抜きにしては、動くことができない。従って科学関係の記事が、新聞の第一面や第二面、あるいは総合雑誌の巻頭にあらわれるのも当然なことである。これは何も日本だけの話ではない、世界的の現象である。しかしこの現象を、近年の日本の場合について考えてみると、この科学ブームが、必然性から産まれてきたものか否か、いささか疑わしい点がある。

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