中谷 宇吉郎

美と科学

美しいという言葉を、人々はふだん何気なくつかっているが、考えてみると、美しさにはいろいろな種類のものがある。

絵や彫刻や音楽など、いわゆる芸術の世界では、美がその対象であるから、話は簡単である。目で見たり、耳で聞いたりして、美しいと感ずれば、それが美である。その感じの内容や、どういうところに美を感ずるかという話は、その先の問題である。

ところで一般には、芸術は美を対象としているし、科学は真を対象としている、といわれている。もちろんそのとおりであるが、この考え方は、誤解を招き易い。というのは、科学は美と無関係であると思われ易いという点である。

抽象的には、科学は真を対象としているが科学の内容には、美の要素が強くはいっている。それで美の立場から、これを見ることもできるのである。

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