中谷 宇吉郎
雷神
雷さまといえば、虎の皮の褌をしめた鬼が、沢山の太鼓をたたいている姿を思い出す。
ああいう雷さまは、一体誰が考案したものか知らないが、なかなかいい。雷と電光とは、夏の景物の中では、出色のもので、少々怖いが、しかし威勢がよくて、悪気がない。虎の皮の褌をしめた雷さまも、決して悪鬼ではなくて、何となく親しめる鬼である。
その雷さまの中での傑作は、宗達の『風神雷神』ではないかと思う。先年アメリカ各地で開催された日本美術展は大成功であったが、あの時にも、この宗達の『風神雷神』は、なかなか評判がよかった。
宗達が、ああいう雷神の着想を、何処から得たかは、一寸興味のある問題である。宗達以前に、日本にああいうものがあったのか、或いは支那にあったのか、よく知らない。もっとも調べてみようと思うほどの道楽気もない。