中谷 宇吉郎
エスキモーの国から
世はさまざまの話
五月の末に日本を立って、米国の東海岸に面した避暑地ウッズホールで、三日間の会議をすませ、昨日グリーンランドのチューレへ着いた。そこから十四マイルばかり氷河のモレインの原を行くと、氷冠にとりつく。そのすぐ手前のところに、タトウのベース・キャンプがある。
ここは、グリーンランドでも、ずっと北の端近いところで、北極点までは、あと八百マイルくらいしかない。北極圏の中でも、ずっと北に寄ったところで、六月十二日というのに、まだチラチラ雪が降っていた。
忙しい旅行を終えて、このタトウのベース・キャンプに落ちついたら、何だかホッとして、日本へ便りを書いてみる気になった。グリーンランドも三年目になると、大分北極ずれがしたようである。