壺井 栄

暦

一

「実枝、年忌の手紙出しといたか」

奥の部屋で出勤前の身支度をしながらのクニ子の声がせかせかと聞えた。茶の間の実枝は赤い箸でたくあんを挾み、わざとゆっくりと前歯で噛みながら、

「ん」と、どっちつかずの返事をした。

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