壺井 栄

おるすばん

一

生まれた時から和子はおじいさん子でした。そんな小さい時のことなど、知ろうはずはないのですが、おじいさんの話を聞いていると、まるでおじいさんに育てられたような気がするほど、おじいさんは、和子の小さい時のことを知っていました。和子のことをカ子と呼び、

「カ子が小さい時にのう。」

と語りだすと、きょうだいのない和子は、ひとりっ子のさびしさを忘れて、おじいさんの語るカ子という子供が和子自身ではなく、どこか遠い国のお話の中の子供のようにめずらしかったり、また妹のようになつかしかったりするのでした。和子はさびしい時など、よくおじいさんにおねだりをしました。

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