山川 方夫

暑くない夏

「……夏が来たのね」

女は、天井を見上げたままでいった。

白い天井。白い壁。白いシーツ。女の顔も白い。

「空を見ていると、わかるの。ついこないだまで、どんよりと空の濁った日ばかりがつづいてたわ。まるで、水に落ちたケント紙のような色の空だったわ。……それが、見てごらんなさい、あんな真青な色になって、むくむくした力こぶみたいな雲が見えるわ」

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