萩原 朔太郎
名詩集「思ひ出」の真価
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◇新しいものは古くなる。しかし善いものは惡くならない。
藝術の鑑賞では、これが最も大切な常識である。わが國の文壇では、いつも「新」と「善」とが同字義であり、「舊」と「惡」とが同じ概念を意味してゐる。即ち「古い」といふ言葉は、いつでも「無價値」を意味して居る。これがたいへんの間ちがひである。
◇すべての新しいものは、必然的に古くなる。昨日の新派は必ず今日の古典となる。しかしながら善いものは、常に永遠に善いのであつて、決して時代によつて價値を變へず、常に必ず善いのである。「古い」といふことは、しばしば「善い」といふことと兩立し得る。この常識がわからないものは仕方がない。