横光 利一

美しい家

ある日、私は妻と二人で郊外へ家を見付けに出て行つた。同じ見付けるからには、まだ一度も行つたことのない方面が良いといふ相談になつた。

私達はその日一日歩き廻つた。夕方には、自分達の歩いてゐる所は一体どこなのだらうと思ふほどもう三半器官が[#「三半器官が」はママ]疲れてゐた。

草に蔽はれた丘の坂が交錯し合つて穏かな幕のやうに流れてゐた。人家はばう/\とした草のために見えなかつた。

「おい、こゝはどこだらう。」と私は妻にいつた。

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