佐藤 春夫
二つの愛国型
(一)
愛国の精神に二つはない。しかしその現れは千差万別人さまざまである。たとへばその根も幹も一つでありながら各の枝にさく一つ一つの花がつくづくと見るとそれぞれ多少の相違があるやうなものであらう。
あまりに複雑な差別はさて置いて、およそ二つの型が見られよう。自国の長所と美点とを誇り喜び心酔してゐるとも見るべき、いはゞごく素朴にすなほな型の愛国者で在来の役人や軍人、教育家など普通に愛国者と認められてゐるのがそれである。
これに対して一方には少々ひねくれた愛国型があるものである。自国に対して不満や不平を抱いて、それが愛国の至誠から出てゐることを自ら疑ひもしないから、さながらに愛するものを鞭打つやうに、彼等は一見非愛国的に見誤られる不幸な愛国者である。