壺井 栄

風

一

ふたりが世の常の男女らしく動けば、ことは平凡に運んだろうに、おたがいになにかしら少し足りないものがあって、なかなかそこまでゆかなかった。つまりふたりの間には長い年月にわたって手紙のやりとりが続きながら、若い男と女の間にあってしかるべき恋文のやりとりは一度もないという、ふしぎな間がらだったのだ。しかし、はたの者にはそう見えなかったらしい。

「修造の嫁は茂ちゃんぐらいでないと納まるまい。」

修造の兄がだれかにそんなことをもらし、それは茂緒の耳にも何度か入ってきたが、茂緒はフンという顔をしていた。修造がフンとしているのを感じていたからだ。茂緒の両親もまた修造の兄と同じ目でふたりをみているのを感じて、茂緒はさらにフンとした。そして親たちには口に出していった。

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