アンデルセン ハンス・クリスチャン

わるい王さま(伝説)

むかしむかし、心の高ぶった、わるい王さまがいました。この王さまは、わしの力で、世界じゅうの国々をせいふくしてやろう、わしの名前を聞いただけで、あらゆる人間をふるえあがらせてやりたいものだ、と、こんなことばかり考えていました。

王さまは、火と刀を持って、国から国へと進んで行きました。王さまの兵隊たちは、畑の穀物をふみにじり、農家に火をつけました。赤いほのおは、めらめらと燃えあがって、木々の葉を焼きはらいました。あとには、まっ黒こげの枝に、焼けた木の実が、ぶらさがっているばかりでした。

かわいそうに、おかあさんたちは、生れたばかりの、はだかの赤んぼうをかかえて、まだ、ぶすぶすと煙のあがっている、かべのかげにかくれました。ところが、兵隊たちは、すみからすみまで、さがしまわりました。うまく、おかあさんと子供を見つけると、まるで悪魔のように、よろこびました。どんなにわるい悪魔でも、これ以上にひどいことはできなかったでしょう。ところが、王さまときたら、こんなことをしても、あたりまえのことのように平気でいるのでした。

王さまの力は、一日、一日と、強くなりました。王さまの名前を耳にすると、だれもかれもが、ふるえあがりました。王さまのすることは、いつもうまくいきました。占領した町からは、黄金や、たくさんの宝物を、持ってかえってきました。王さまの都には、世界じゅうの宝が、山と積みあげられました。これほどの宝は、どんな都にも見られません。

青空文庫の作品カード