原 民喜
誕生日
雄二の誕生日が近づいて来ました。学校では、恰度その日、遠足があることになっていました。いい、お天気だといいがな、と雄二は一週間も前から、その日のことが心配でした。というのが、この頃、毎日あんまりいいお天気ばかりつづいていたからです。このまま、ずっとお天気がつづくかしら、と思って雄二は、校庭の隅のポプラの樹の方を眺めました。青い空に黄金色の葉はくっきりと浮いていて、そのポプラの枝の隙間には澄みきったものがあります。その隙間からは、遠い遙かなところまで見えて来そうな気がするのでした。
雄二は自分が産れた日は、どんな、お天気だったのかしら、としきりに考えてみました。やっぱり、その頃、庭には楓の樹が紅らんでいて、屋根の上では雀がチチチと啼いていたのかしら、そうすると、雀はその時、雄二が産れたことをちゃんと知っていてくれたような気がします。
雄二は誕生日の前の日に、床屋に行きました。鏡の前には、鉢植の白菊の花が置いてありました。それを見ると、雄二はハッとしました。何か遠い澄みわたったものが見えてくるようでした。
「いい、お天気がつづきますね」