山本 周五郎

矢押の樋

一

「あれはなんだ、衣類のようではないか」

外村重太夫は扇子で陽を除けながら、立停って顎をしゃくった。城の内濠の土堤の上に、衣服と大小がひと束ねにして置いてある、六月早朝の大場は、ぎらぎらと刺すような烈しい光を射かけているが、まだ四方には人の姿も見えない刻限だった。

「加兵衛、此処へ持って来てみい」

青空文庫の作品カード