山本 周五郎

しぐれ傘

鯉の宗七

一

佐野屋藤吉は、女房の酌で朝酒を呑んでいた。

いつも四、五杯で機嫌よく酔うのが、今朝はもう二本めをあけようとしているのに、髭の剃跡の青い固肥りのした顔は妙に冴えて、「眼玉の藤吉」と綽名のついている大きな両眼は、さっきから店の方を睨んではぎらぎら光っていた。

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