北村 兼子

ねこ

新秋の氣もちいゝ風が簾を透して吹く、それが呼吸氣管に吸ひ込まれて、酸素が血になり、動脈が調子よく搏つ………その氣が味はへない。

澄んだ空の月を寢ながら眺める、人いきれから逃れた郊外の樂みは、こゝに止めを刺す……それが觀られない。

空氣も流通しないほど、ピシヤリと障子を建てゝ蒸されてゐる、息がつまる。

それは猫のため、兒猫のため、五寸にたらぬ小さな猫一匹で、五尺に近い體を持てあます。苦しい。

青空文庫の作品カード