折口 信夫・釈 迢空

鵠が音

硫黄を発掘する人々の外に、古加乙涅を栽培する数家族が、棲んでゐた。其人々を内地に移した。さうしてそこに、後から/\送つた兵隊で、島は埋まれてしまつたと言ふあり様であつた。春洋と、春洋の所属する「膽二十七玉井隊」の一大隊が上陸したのは、昭和十九年の七月であつた。食糧なども、前からゐる隊のやうに、すら/\と渡らなかつたらしい。――これは後に聞いた話である。

みんな一度は、ぱらちぶすに罹り、島の硫黄泉で、腹を損じた。

そんな間に、手紙やはがきを、よこした。極端に変化のない生活の間に、書き知らせる事件を見つけることすら、なか/\容易でなかつたことゝ思ふ。

其でも、長短二十通に及ぶ島のおとづれを、送つて来てゐる。

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