作者不詳

現代語訳 平家物語

首渡し

一の谷の合戦で討たれた平家一門の首が都に帰ってきたのは、寿永三年二月七日である。

この噂を伝え聞いた平家の縁者たちは、一体誰の首が帰ってくるのだろう、自分にゆかりのある者でなければ良いがと、夜もろくろく眠られない始末である。

まもなく、首といっしょに一人生捕りになった三位中将も帰って来るという噂がつたえられた。この噂に心を痛めたのは、小松三位中将維盛の北の方である。三位中将と聞いただけで、てっきり、それは維盛に違いないと思いこみ、悲しみのあまり床に就いてしまったのである。ところが、この三位中将は同じ三位中将でも、本三位中将重衡のことだということがわかった。しかし、そうなると今度は、小松三位の方は首の中にあるのではないかという疑いが起り、嘆きは更に深くなってゆくのである。

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