作者不詳
スザナの物語
バビロンにヨアキムという人が住んでいた。そしてこの人はスザナという妻をもらつたが、これはケルキアスの娘で、たいへん美人であり、神を恐れる婦人であつた。この女の両親も正しい人で、モーゼの律法に従つて娘を教育した。
さてヨアキムは金持でえらい人だつたが、家に接する美しい庭園を持つていた。そしてこの人は他のだれよりも尊敬されていたので、ユダヤ人たちがしげしげと出入りした。
その年に人々の中から二人の長老が裁き人に任じられたが、これは主が告げたもうたように、邪悪はバビロンの老いたる裁き人からくるというたぐいの人で、人々を支配しているようであつた。この二人はたいていヨアキムの家にいて、法律の訴えをする者はみなここへ来た。
さて人々が正午に立ち去つてしまうと、スザナは家の庭園へ散歩に行つた。そして二人の長老は毎日彼女が散歩に入つてくる姿を見て情欲を燃え立たせていた。そして邪心を起こしたので、眼をそむけて、天を仰ぎ見ないようにし、正しい裁きを思い出さないようにした。そして二人とも彼女への恋に傷ついていたけれど、それでも相手に自分の悲しみを見せようとはしなかつた。というのは彼女を自分の物にしたいという欲情を公言するのを恥じていたからである。それでも彼らは毎日怠らずに彼女を見ようと注意していた。